追憶 ―箱庭の境界―


「……ふ、ふふ…。あははは!」


可笑しくて、
可笑しくて堪らなかった。


もう言い逃れは出来ない。
追い詰められた青年の笑い声だけが、城の廊下に響いて木霊していた。



「…貴方の目的は、何…」


王女は静かにそう問う。

自ら仮面を被り国中の人々を騙し、やっと此処まで来た。


「あははははは!ははは…」


偽りの信頼を得て、
青年が成し遂げたかった事。



「ふふ!…あぁ、カルラ様。ふふふ、僕はね…?『鬼ごっこ』の途中なんですよ…」


「――……衛兵!!」


青年の残した言葉の意味には、誰もが触れなかった。


自身の才能に溺れ、
『気が触れた者』として、

青年は国を追われた。



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