赤い手の人
「それでね、この十字架。何か長生きするおまじないがかかってるんだって」
「な~んか胡散臭いなぁ」
この十字架がねぇ…。
パワーストーンとかなんだろうか。
「だから、はい。君にはこの長生きのブレスレットを与えよう」
「へ?」
「いやね、長生き二倍って生きすぎだと思ったの」
「あ…。ありがと」
それは桜色のミサンガのようなものだった。
「私からの御守り、ってことで」
「なるほどね…」
「それに色。さくらに桜色のブレスレット、ってよくない?」
「結局ダジャレオチなの?」
あ、申し遅れました。
私"さくら"って言います。
「いいじゃん。似合ってるし、ね?」
「う~……」
こうして、私は長生きのブレスレットを手に入れた。
あんまりそんなのは信じないタチだけど、御守り代わりだから。
気持ちの寄りどころにはなる。
お昼休みはすぐに終わり、またつまらない授業が始まった。
私はと言うと、授業そっちのけで睡魔と戦っていた。
「私今から委員会みたいだから。長くなるって」
放課後、私には用事があった。
ただでさえ釣瓶落とし、すぐに暗くなるのに居残りなんて。
ゆきのは教科書をしまう作業を終えて、
「うん。じゃあ頑張ってね」
と言った。
その後少し雑談したけど、ずっと十字架を触っていた。
その事を言うと、
「え?あー、無意識」
心底嬉しそうに笑いあった。
お互い軽く手を振って、明日までの別れを惜しむ。
明日また会えるのは当たり前なんだろうけどね。
こんな時はちょっと寂しくなる。
学校を出る頃には、外は真っ暗闇だった。