赤い手の人
「ホントもう夜みたい……」
ここ何日間かでまた日没が早くなったみたいだ。
つい何ヶ月か前まで昼は長かったし、暑かった。
それがもうこんなに寒くなってきている。
あぁ冬が来るんだな、と感じられる気候だ。
20分も歩けば目的地。
でも闇の中に落ちている町は、私の時間感覚を忘れさせる。
(………)
息をする度に空気が喉を刺す。
昼間と暮れてからの温度差にもあまり驚かなくなっていた。
(寒……)
風が私を通り過ぎた。
足が冷え、それが体中を回る。
人の温もりが欲しくなる気温だ。
暗くて怖いと評判の山沿いの道。
そこを歩いていると、見知った制服が目についた。
(あれ?)
薄暗い街灯の下で、男の人が立ち尽くしていた。
その異様な光景に足がすくんだ。
同じ高校の学生服。
でもその体に余分なものは一切ない。
つまり、鞄なんかも持ってない。手ぶらで夜道に制服で、なんて明らかにおかしい。
それに、少し震えている?
(ちょっと怖いな…)
すれ違うまであと十歩。
八、七、六。
彼は一切動く気配がない。
四、三。
身長は結構高い人だった。
あれ?右手が…。
二、一。
「ぁ……」
彼から声が漏れた。
低い声。下に響く声。
私は恐ろしくて振り返ることができない。
足が震えて一歩が遠い。
「…めんなさい」
「え?」
後悔をした頃にはもう手遅れだった。
後頭部が揺れ、視界が崩れる。
彼は右手にパイプのようなものを持っていた。
そのまま私は膝から地面に落ち、意識が飛んだ。
まさか十五年で人生を終えるなんて。