scar of heart【BL】
保健室に授業開始のチャイムが鳴り響く。
授業に出なきゃいけないって思うけれど、今はこの手を放したくない。
次は…体育だっけ。
サッカーなんだよなぁ。
楽しみだったけど、今は柚里の方が大事。
手を握ったまま、ベッドに顔を伏せた。
「あー最悪。サッカーで足捻るとか…」
「和馬はボールにガッつきすぎなんだよ」
保健室に向かう男2人。
足を捻った市川と、その付き添いの有貴だった。
「知ってる?幸村って柔道やってるんだって!」
何故か笑顔で言う市川。
「それぐらい知ってるけど…」
「で、次の日曜に試合なんだってさー」
「…それは知らなかった。和馬は何で知ってるの?」
「柚里ちゃんから教えてもらった!一緒に見に行くんだ、幸村の勇姿を!」
「俺も、行こうかな」
「じゃあ、俺達と一緒に行こうぜ!」
「うん」
有貴はこくりと頷いた。
話は聞くけれど、実は未だ見たことが無かった流羽の柔道。
直接教えてもらえなかったのは少し残念だが、サプライズってことで。
流羽、驚くかな…
貸している右肩が痛むが、有貴の心は弾んでいた。
「失礼します。体育で足捻ったんすけど…」
保健室は静かだった。
「先生いないな。…どうする?足、冷やした方がいいのかな」
キョロキョロと辺りを見回す有貴。
「そうだなー。とりあえず座りたいんだけど」
市川は、捻った足を労りながら椅子に座る。
「氷持ってきた。あと、湿布とか」
有貴がそれらを抱えて戻ると、市川は
「静かに」
と人差し指を口に当てて注意を促した。
「…ベッドに、誰かいる」
小声で、市川は言った。