scar of heart【BL】
保健室を出た俺は、更衣室で、体育着に着替えていた。
時間はあとわずかだが、身体を動かしておきたい。
しかし、先生がそれを許してくれるかは、定かではないが。
「あっ、見つけた…」
「…有貴」
更衣室に有貴が入る。
「体育出るつもりなの?」
「…悪いか?」
「うん。悪い」
有貴の目の色が変わった。
「俺に内緒で授業はサボるし、その上、香坂さんと一緒だし…」
有貴に迫られ、徐々に更衣室の奥へと追いやられていく。
「…熱があって倒れたんだぞ。放っておける訳ないじゃん」
「柔道の試合のこと、和馬は知ってたのに、俺は知らなかった。さっきは別にいいと思ってたけど…気が変わった」
強引に押し倒されて、首元にかじりつかれた。
「……っ…」
「隠し事した、お仕置き」
「隠し事…」
隠し事で、思い出した。
あの日の放課後、有貴が野球部のキャプテンに迫られていたこと。
「…有貴にだって、あるんじゃないのか」
「何のこと?」
「野球部のヤツに告られてたじゃん」
「…あの時、流羽もいたのか」
「まぁな。それはいいんだけど、有貴だって俺に何も言ってくれないじゃん…。好きだって言うけど、それじゃあ有貴の気持ちがわかんねぇよ」
つい、勢いで言ってしまった。
俺は、一体何が言いたいんだろう。
今の俺、有貴のことが好きって言っているのと同じじゃないか。