scar of heart【BL】
第4章 好きだということ
夏の昼下がり。
冷房の効いた自室の椅子に腰を下ろしながら、うーんと唸る。
携帯を手に取り、電話帳のか行を開いた。
“香坂 柚里”と表示されたそこに登録してある、090から始まる11桁の電話番号。
ボタンを1回押すだけで、柚里に繋がってしまう。
声が聞けてしまう。
けれど俺は、そのボタンを押せずにいた。
用件は、デートのお誘い。
恐らく、最後の。
そう思うと、やっぱり覚悟というものが必要になってくる訳で。
その覚悟というものは、どうやら俺には備わっていないみたいで。
あぁ…こんな自分が、自分で嫌になってくる。
誰か、こんな時に俺の背中押してくれる人…いないかなぁ。
「にーいーちゃんっ!」
ぼうっと携帯の画面を見つめていると、後ろから、本当に背中を押されてしまった。