scar of heart【BL】
「先生、有貴の怪我はすぐに良くなりますよね?」
無言でレントゲン写真を眺める先生に、母が心配そうに尋ねた。
少し間を置いて、先生はこう言った。
「右肩と背骨にヒビが入ってるね。歩けないっていうより、起き上がれなかったって感じかな?」
「そんな感じです…」
「有貴くんは、何かスポーツとかやってる?」
先生にそう問われ、嫌な予感が頭を過る。
「野球をずっと続けてきたんですけど、今は受験に向けて引退しました」
「受験が終わって無事進学したら、続ける予定は?」
「……えっ、と…」
野球を続けるか、続けないかと聞かれたら、続けると答えようと思っていた。
引退試合の後、三浦にこう言われた。
『高校生になったら、同じマウンドで、今度は仲間じゃなく敵として、一緒にプレーしよう』
感涙を流す三浦そうに言われて、俺も
「約束。絶対戦おう」
と答えた。
高校野球はずっと目標にしてきたステージ。
出来れば甲子園の地にも立ってみたかった。
今ここで「続けたい」と答えたら、先生はどんな言葉を返すのだろう。