My Dear Bicycle Racer!!
その言葉に、私は戸惑ってしまった。携帯番号とか聞いたらマズイだろうか・・と思ってしまったからだ。
「・・あのさ、KYな事聞くけどいいかな?」
「いいけど?」
「携帯の番号とメルアド教えて欲しいのだけど・・駄目かな?」
桂木は何も言わずに手を私に差し延べた。
「え?手?」
「番号知りたいんでしょ。携帯貸して」
「あ、ああそういうことね」
自分の携帯を桂木に渡す。桂木は自分の携帯を取り出し、私の携帯の電池蓋の所を見て、桂木の携帯と重ね合わせた。すると、2つの携帯がブルルという振動が走った。
「はい、返すよ。暇だったらメールなり電話すればいいよ」
「返すって・・何したの?」
「アドレス帳見てみたら?」
桂木の言うとおりに私は携帯のアドレス帳を開く。見ると、桂木の電話番号とメールアドレスが登録されていた。
「すご!どうやったのこれ?」
「どうって・・ただ2つの携帯合わせただけ。新井さんから教えて貰ったよ。この方が早いからって。あの人、いろんなこと知ってるよ」
そう言うと、桂木はまた、真っ直ぐ向こうを見つめた。私もそれにつられ、売店で買ったパンをかじる。沈黙のまま時間だけが過ぎていく。
(話題無いな~。なんか話題見つけなきゃ・・)
話の内容を考えるものの、上手くまとまらない。昼休みも終わりに近づいた頃、桂木が口を開いた。
「帰りにどこか行きたいところある?」
その一言に私はすかさず反応した。
「K'sサイドに行きたい」
K'sサイドは市内の繁華街にあるカジュアルショップのことだ。最新のファッションや限定品など置いており、学生や若い人がよく立ち寄る。流行の雑誌にも紹介されている。
「あそこに限定のアウターがあるの。前から欲しかったんだよね~」
意気揚々と立ち上がる私。いささか興奮気味だ。
「じゃ、帰りにそこ行こうか。俺も行きたいところあるし」
「ねぇ!桂木君も服とか欲しくない?私がコーディネートしてあげるよ」
「え?いや、俺は・・別に」
「いいからいいから。私、すっごい自信あるの。これで何組のカップルができたことか~」
桂木の言葉を半ば無視し、目をウットリさせる私。ちょうど、予鈴のチャイムが
鳴り始める。
「やば!教室戻らなきゃ。じゃ、帰りにね」
親指を立てる私。それに若干引き際だが、応える桂木であった。





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