My Dear Bicycle Racer!!

アナウンスが車内に響き渡る。電車を降りた2人は人の少ない所で手を上に上げた。高木浜地区は八幡市内で最大の繁華街で利用客も多い。駅を降りれば大きなショッピングモールが顔を出す。
モール内を歩くと、『カジュアルショップK'sサイド』と書かれた建物があった。
「ここよ、ここ。うし、今日は買いまくるぞ～～」
今日あった出来事を一気にはらすか如く店に入る。桂木も私の後についてくるが、「お金、あるの？」と桂木は聞いてきた。
「もちろん、あるよん～」財布を桂木に見せる。そこには諭吉が数枚入っていた。それを見た、桂木は納得したらしい。
「あらま～いらっしゃい、明日香ちゃん～～。久々ね～」オカマ口調の店員が私に声をかけた。この店員はトニー・雅という人でこの街では有名なカリスマスタイリストである。
「こんにちは。PEの限定品があるってメルマガで書いてたんだけど」
「あるわよ～。でもね残り1着！パーカーだけど買う？」
私は少し悩み買うことに決めた。値段は高かったが、限定という言葉に弱い私とって痛手にはならなかった。それを見ていた桂木は「PEって何？」と私に問いかけてきた。
「ああ、Pink Emotion(ピンクエモーション）のことよ。洋服とか化粧品とかいろいろ出してる所よ。このフワフワ感がたまらないのよね～」浮かれ気分の私をよそに桂木は、その言葉に眉間にしわを寄せていた。
「ピンク、エモーション・・・」
「どうしたの？Pink Emotionに何か思い出でもあるの？」
「いや、何でもないよ」
「そう・・。あ、桂木君は何か見つけた？」
「これなら見つけた」
桂木が手にしたのは、でかい文字で「助蔵」と書かれたプリントシャツだった。私はそれを見て顔を引きつらせた。
「そ、それでいいの？てか、買うの？」
桂木は無言で頷き、レジに持っていく。「あら～助蔵Tシャツね～。これ、割と人気なのよ～～」とトニー節が炸裂している。お金を支払い、店を後にすると、
「あ、明日香じゃねーか！」と呼ぶ声が聞こえてくる。見ると、自宅謹慎処分くらっている、拓真と派手な女性だった。