My Dear Bicycle Racer!!
「ただいま~」と声をあげるが、誰も反応はしない。それもそのはずで、父親は単身赴任で北海道に、母親は大手出版社の編集長で3日も帰ってきてない。私は携帯の明かりを頼りに照明のスイッチを探し、つける。家の中はひんやりとしている。着替えもせずにテーブルにあった買い置きの食パンを口にしてテレビのスイッチを付けた。テレビから流れてきたのはバラエティー番組でだらだらと見続けた。2枚目の食パンに口をつけようとしたとき、携帯のメール着信音が鳴った。差出人は新井だ。

-どや?会えた?どんな感じだった??教えておくれ~-

私はすぐに返信をした。数分もしないうちに新井から返信のメールが届く。

-それ、マジ?マジで桂木っちだったの?なんか意外だな~ケー番とアドは聞いた?-

そう言えば、番号とアドレスを聞いてなかった。あの時はそんな雰囲気になれなかったし・・明日あたり聞いてみよう。新井にメールを返信をしてシャワーを浴び、パジャマに着替え、ベッドに潜った。

翌日、携帯のアラームで目が覚めた私は目をこすり顔を洗うため洗面所へ行こうとしたきに、玄関のドアが開く音がした。見ると、私の母である、順子(よりこ)の姿があった。髪の毛がめちゃくちゃに荒れており、目もかなりすわっている。気のせいだろうか、母の服から若干、すっぱい匂いがする。
「お、お母さん、おかえり」
私は寝ぼけ眼状態だったが、母の姿を見て、一気に目が覚めてしまった。
「あら、あんた起きてたの。ご飯は・・いらなかったわね」
「う、うん。てか、仕事終わったんだ」
「やっとね・・・。シャワー浴びて寝るわ。遅刻しないようにね」
そう言うと、母はよたよたと風呂場へ行った。私は母の姿を見送った後、顔を洗い、制服に着替えた。
「お母さん、学校に行ってくる。お母さん、聞こえてる?」
シャワーの音が激しいため聞こえてないのか、私が言っても、母の返答がない。
「お母さん?」
不審に思った私は風呂場のドアを開けると、そこには立ったまま眠っている母の姿があった。頭からシャワーを浴びているにもかかわらず、すやすやという寝息を立てて・・。







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