My Dear Bicycle Racer!!
「ハァ・・」という軽いため息をついた私は、声を大きくして母を起こした。
ビクッとした母は慌てて後ろを振り返り、「どうしたの?あんた、そこにいると制服濡れるわよ」と私に言った。
「そんなところで寝たら風邪引くよ。ていうか、立ったまま寝るとかどんだけ器用なのよ!ちゃんとシャワー浴びて上がって。これじゃ、心配で学校に行けないじゃない!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃない。疲れて眠っただけよ。死にはしないから安心して頂戴。早く行かないと遅刻するわよ」
壁に掛かっている時計を見ると、7時半を過ぎていた。
「やば!遅刻する!行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
母の声を聞きながら、慌てて靴を履き、玄関を出る。マンションの1階に住んでいたおかげでエレベータや階段を使わないで済んだのが不幸中の幸いだろう。
駅までダッシュで走る私。駅に着いて人がごったがえしている。何かあったのだろうか・・・?時折、怒号まで聞こえてくる始末。
「一体、何の騒ぎ・・?」
私は何とかして人混みの中をかき分けて構内に入っていく。看板を見ると、

 -お客様へ。人身事故発生のため、八幡都市環状線(やはたとしかんじょうせん)、上回り、下回り線とも運転見合わせとなっております。大変ご迷惑おかけ致しまして申し訳ございません。お急ぎの方は地下鉄の方をご利用ください。   駅長-

と書いてあった。私は目を疑った。学校に行くにはこの環状線を使わないといけないのだ。地下鉄は学校に止まる近くの駅は無い。
「嘘でしょう!!こんなのアリ?あ~もう、ついてない!!どうしよう・・」私は頭を掻き、駅の電光掲示板を見上げた。同様な文が右から左に流れている。
時計を見たら、7時50分を指している。時間だけが悪戯に過ぎていく。
「しゃーない。学校に連絡しよう・・」
私は携帯を取り出し、学校に連絡を入れる。数回のコール音が鳴った後、男の声がした。
「はい、おはようございます。県立 駒ヶ丘高校です」
「あの、2年D組の嘉納といいます。あの、山室先生はいらっしゃいますか?」
「ん?何だ、嘉納か。何だ、風邪で休むのか?その割りには元気そうだが?」
「あ、先生でしたか。あの、実は電車が事故で動かなくて」
「何?本当かね。ん~遅刻しても良いから、とにかく来なさい」

 








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