My Dear Bicycle Racer!!
「そうか。なら、1時間目の授業はノート取ってる奴に写させて貰え。あと少し時間あるから、そこにいなさい。お茶でも飲むか?」
「え?あ、はい。いただきます」
「うむ。すぐに入れるから待ってなさい」
山室は、給湯室に入っていた。こういうもてなしは初めてだが、私の知ってる先輩たちは何回かしてもらったことがあるらしい。いわゆる、山室流の接し方なんだろうか。山室はお盆にお茶と甘そうな和菓子を載せ私に渡した。
「お茶は熱いから気をつけて飲めよ。あと、朝飯食べてないんだろ。腹は満たないかもしれんが、これ喰えば少しは違うから」
普段、朝食は取らないためお腹は空いてない。それに朝からこういう甘ったるいのは好きではない。なので、お茶だけ貰った。山室は少し怪訝な顔をしたが、給湯室に和菓子を持っていった。お茶は少し苦みがあるものの、飲めないというほどではない。
「お菓子、先生が食べれば良かったんじゃ?」
「ん~?別に腹は減ってないからな。それに、今は授業中だし、他の先生方に失礼だろ」
その言葉で納得し、お茶を飲み続ける。するとチャイムが鳴り、1時間目の授業が終わった。
「どうやら、終わったみたいだな。教室に戻りなさい。片付けは私がやるから。それとも、まだここにいるかね?」
「いえ、教室に戻ります。お茶、ありがとうございました」
礼を言い、職員室を出た。出るとき、山室の少し微笑んだ顔が見えた気がした。

教室に入ると、何人かの生徒が私を見た。
「よう!嘉納。大丈夫だったかよ」
「私てっきり、あんたが事故ったのかと思ったよ」
数人の生徒が気遣いの言葉をかけ、私は「平気だよ」と答えた。席に座り、教科書類を机の中にしまい込もうとしたとき、一人の男が私の前に立った。その姿は仁王立ちで私を睨み付けている。学級委員長の西沢治臣(にしざわはるおみ)だ。超がつくほど真面目な性格で成績も優秀。瓶底メガネをかけており、髪も常に短髪という姿だ。
「何?どうしたの?」
「嘉納さん!先生からは事故で遅刻とは聞いていましたが、本当はどうなのですか?実は、サボっていたということは無いでしょうね」







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