Salvation 〜救い〜
画面が

「送信しました」

に替わるのを確かめてから

ケータイを

またテーブルの上に置いた。



ジャンパーをゴミ袋に入れて

インスタントのコーヒーを飲もうと

やかんに水を入れて

火にかけたところで

またケータイが鳴った。



やはりまたミカからのメールだった。



「もう家に帰ってるのー?じゃあ、行っていい?」



最後の「いい?」の後に

ハートのマークがついていた。



トシキの返事の内容を

全く無視したその文章に

嫌気がさしたので

今度は返信せずに放置する。



やがて

やかんが水の沸騰を告げる

かん高い音を鳴らし始めたので

火を止めて

コーヒーカップに

熱湯を注ぎ込んだ。



立ち上る湯気が

トシキの

全身の緊張をほぐしていく。



カップに口をつけ

ゆっくりとかたむける。



喉の奥から胃に

熱く苦い液体が

流れこんでいく。



まるで

瞬時に全身にいきわたるように

筋肉がときほぐされていく。



椅子に深々と座りなおして

コーヒーを味わうトシキだった。



その長い前髪の下の

鋭い眼光が

やっと少し

おだやかになりかけたその時

みたび携帯が鳴った。


今度はメールではなく

電話の着信音だった。
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