いくつかの夜
そして、いま、さっき見送ったはずの彼氏がいる。

店の前を通りすぎ、少し離れた場所に。

私を………待ってるのだろうか。

そんなことされたって、簡単に喜ぶような単純な女じゃない。

本当の彼女の私は……そんな単純な女じゃない。






単純な女なら良かったのだろうか。


『逢えて良かったぁ。嬉しいなぁ。さっきはびっくりしたんだよ?やきもちやいちゃうよ?でも待っててくれて嬉しかった。』


なんて言って可愛いく上目使いで………

有り得ない。

そんなこと出来るなら、とっくにしてる。

出来ないから、逢えない日ばかりが増えていく。

増えた逢えない日を忘れた事にするから、逢える日を待つことが出来る。

きっと、意地悪な言葉しか出てこない自分を想像し、思わず溜め息がもれた。


営業時間が終わるまで、もれそうになる溜め息をこらえながら花束を作り続けていた。




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