いくつかの夜
見上げた空は真っ暗で、あの可愛い笑顔が浮かび上がった。

自然と笑顔になる。

大好きなはずの人の笑顔はちっとも浮かばないが、そんなのはたいしたことじゃない。

きっと今日も残業だろう。

頑張って一人前になったらいっぱい美味しいもの奢らせよう。

大好きなかすみ草、部屋中に飾れるほど買って貰おう。

恋人として?

友達として?

知り合いとして?

ただの……懐かしい後輩として?




昨日の約束。


多分駄目だとわかっていて取りつけた。

どうしても逢いたかったから。

理由なんか無い。

逢いたかったから。


「今日お店早番なんだ。夕飯どう?」


『ほいほい。じゃあいつものところに6時ごろで良いか?』


「仕事大丈夫?」


『多分な。また連絡する。』


通勤時間を狙ってかけた電話。

待ち合わせのいつもの本屋で3時間待った。

最近の本屋はいたれりつくせりで、ソファがあちこちにあり、ゆっくり読める。

何冊読んだかもわからないくらいに充実した3時間だった。


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