倉庫の王様
ふたり分のコーヒーをテーブルに並べた父の真面目な顔に心臓がドクドク脈打つ…。



なにを聞いても父は父…。



それだけはなにがあっても変わらない…。



「サチのママは…サチを産む寸前に亡くなった」

「やっぱりいないんじゃん…」

「それから…サチの…本当の父は…」

「えっ?き、聞こえな…」

「父ちゃんはサチのお父さんじゃない」



じゃあ…なに?



14歳であたしが生まれたって…。



ずっと父の子だって…。



嘘つき…。



「サチは…俺の娘じゃない。姪だ」

「姪…?」

「サチの本当の父親は父ちゃんの兄。黙っててすまなかった…」



父にお兄さんがいたの?



会ったことも存在も知らなかったのに…。



父が父じゃなくて、あたしは父の姪で…?



意味がわからない…。



「兄貴とお前のママは事故で亡くなったんだ」

「…………」

「お前だけ助かった…」

「父は…なんであたしと暮らして…るの?」

「それは思い出さなくていい。辛い過去は忘れてていいんだ」



過去なんて記憶…父の記憶しかない…。



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