倉庫の王様
親父のその反応でなにも言えなくなった。



だってなんだか親父が嬉しそう…。



「継いでやるよ、家」

「教師やめるのか」

「あぁ、桔梗達にもそう言った」

「俺はまだまだやめる気はない」

「だけど俺にもブランクがあるから。戻って稽古受ける」

「お前はダメだ、筋が悪い」



昔は朝から晩まで付きっきりだったくせに…。



泣いても少し体調が悪いくらいじゃ休ませてもらえなかった…。



あれで俺に才能がないなら桔梗は凡人だろ。



「お前はもういい…」

「親父…」

「たまに帰って来て桔梗に指導してやれ…。仕方ないからそれで許してやる」



どうやら俺は家を継がなくていいらしい。



倒れた弱気な親父の本音…。



少しだけ俺と親父の関係が修復された気がした。



「ユリさん、帰って寝たらいい」

「安心したら気が抜けちゃった…。帰るからあとよろしくね?」

「たまには面倒見てやるのも悪くねぇな」




俺も素直じゃないけどきっとこれは親父譲りだと実感した。



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