倉庫の王様
料亭が昼からでよかったと思いながら向かった懐かしい石畳。



中に入ればもう誰にもバレない。



「まぁまぁ、大きくなられて!!」

「女将さん、訳ありだから口外しないでもらえます?」

「わかってますよ。さぁどうぞ~」



ここなら誰にもバレない。



口の固い店を知っててよかった…。



「せんっ…」

「それナシ。名前で呼んで?」

「ごめん…。あのさ…」

「ん?」

「高そうだけど…」

「お前が心配することじゃねぇから。なにげに金持ちなんだぞ」



まぁ若干ウソだけど…。



でもサチと付き合ってから雑費が減って給料の半分くらいの使い道がなくなったのは確か。



女と遊ばなくなった証拠だな…。



それから運ばれて来た料理を嬉しそうに食べるサチにこっちまで嬉しくなった。



「せん…遊和君…」

「なんだぁ?」

「ありがと…」



まだ名前を呼ぶと照れ臭そうにするサチがカワイくて仕方ない…。



そんな顔していいわけ?



今日はひとりのオスだぞ?



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