倉庫の王様
風呂から出て、部屋で一服してたらサチが戻って来た。



浴衣だ…。



「先生の浴衣姿好きっ!!」

「久しぶりに着た」

「踊ってよ~」



えっ、俺が日舞やってたことも知ってんの?



そういえば親父もユリさんもサチを知ってたっぽい…。



なんでも知ってんだな。



「変なこと言っていい?」

「うん?」

「抱きしめたい…」

「えっ!?ま、待って!?心の準備が…」



体が先に動いた。



考えるより行動…。



小さな体を抱きしめたらすっげぇ切ない気持ちになって…。



俺が泣きたい…。



「サチっていいな…」

「あんまり…期待させないで…」

「期待?」

「先生の迷惑にならないようにするから…。忘れる努力するから…。だから優しい言葉はいらない…」



なんだよそれ…。



サチって鈍感なの?



「好きとかよくわかんねぇけどさ…サチといると落ち着く…」

「だからやめてってば!!」

「いいから聞け!!ついでに顔上げんな…」



静かになったサチを抱きしめたまま。



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