倉庫の王様
『卒業おめでとう』とか『これからも頑張って』とか?



あたしに対して先生はどんな言葉を選ぶのか、少し楽しみだった。



先生の目の前に立ち、久しぶりに目があってる…。



「龍ヶ崎サチ…」

「はい」

「結婚してください」

「えっ…?」

「返事は倉庫でな?早く行け」



頭真っ白…。



ステージから降りて羽賀先生の横を通るとニヤッと笑った…。



し、知ってたの?



誰かに聞こえてないかとか、マイクのスイッチはちゃんと切ってあったのかとか…。



いらぬ心配ばっかりした。



「宮さんなんて?」

「いや…なにも…ウソだよ…きっと…」



だって結婚はまだ先だって…。



あれは記憶なくす前か…。



本気なの!?



だとしたらあたし…。



それからは式が終わるまであっという間だった。



歌うのが最後になる校歌も、卒業生の歌も。



なんだか記憶がないんですけど…。



ねぇ先生?



そんなサプライズ、予想外すぎて困るよ!!



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