なんでも屋 神…第一幕
「…おう、神じゃねーか。ウチの…ウチの馬鹿息子な、一番親不孝な事しやがった…。」



親父さんが無理して作った笑顔も、上擦りながら出した声も、直ぐ様何処かに消えてしまった。



死刑台に登るように、一歩…また一歩とベットに近付く。



お袋さんは、俺が入ってきたのを確認して、無理矢理に涙を止めた。



小刻みに震える手で、顔にかかってある白い布を取る…。



「…松…松!お前…何寝てんだよ…。」



不思議と涙は零れなかった。俺の耳には、松のお袋さんが再び声を出して鳴き始めた音しか入ってこない。



普段の倍も腫れ上がった顔…眼底は窪み、紫色の痣が、首の所まではっきりと見て取れた。



…力など微塵も籠もっていない親父さんの虚ろな瞳と、お袋さんの甲高い鳴き声が、俺の心に一本ずつ確実に突き刺さっていく…。
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