なんでも屋 神…第一幕
俺がタクシーを降りた先は、暗雲で灰色に染まった安田病院の白い壁とは違い、この天候のお陰で更に深さを増した、漆黒の外壁を纏ったビル。



エントランス脇の壁には、縦書きで黄金に輝く[神堂総業]の文字。



ビルの中に入っても、気の利いた女性受付等存在しない。漂う無色透明な空気の色に色が付けば、それは間違いなく黒だろう。



一階はパーテーション毎に区切られ、坊主頭や金髪の若い衆が、一心不乱にパソコンに打ち込みを行っている。



二階は[神堂組]のフロント企業である[神堂不動産]。三階と四階も同じく、フロント企業の[神堂ファイナンス]と[神堂ローン]。



五階から先が事務所になっているが、五階は平組員の居住空間も含んでいるから、正式には六階から[神堂組]事務所になる。



六階を通らなければ、七階には行けない仕組みになっている為、沈鬱な気持ちなまま防弾ガラスで造られたガラス戸を開く。


「なんだガキ、来る所を間違えたか、それとも死にたいかどっちだ?」



黒のセットアップに、銀龍の刺繍が施されている金髪が吠える。



「間違えてもなければ、死にたい訳でもない。一々ギャーギャー喚くなチンピラ。若頭の黒沢一樹に会いに来た。話しは通してある。」
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