なんでも屋 神…第一幕
松の死を切っ掛けに、再び狂人の扉が開こうとしているのを、自分でも確かに感じていた。



そして、その扉を開くのを踏みとどまっているのは、一葉の存在が大きいという事も…。



萩が事務的に造られた木の扉を、二回ノックして開いた。



「失礼します。神さんが来られました。」



部屋に通されると、猫足のテーブルの上には今日の全国紙が三紙。その脇にソファが二脚。窓の所には本棚が置かれ、辞書から六法全書、何かの専門書までが幅広く並べられていた。



「来たか神、丁度良かった。萩、お前はあっちに行ってろ。」



足と直角になるまで頭を下げると、萩は静かに部屋を出ていった。



兄ぃがメモ用紙で山盛りになっているデスクから、此方のソファに歩いてくる。



顎ら辺のシャープ差が増して、少し窶れたように見える兄ぃ。



「たった今、離島に飛ばした子飼い達から連絡が入った。ブツは全て回収して、明日こっちに戻ってくる予定だ。子飼いが一人死んだが、この仕事をしていれば必ず死は付きまとう。」



「まさか、死んだのはノリじゃないよな?」
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