なんでも屋 神…第一幕
過去の呪縛と悪霊に取り憑かれ、その中で必死に藻掻く俺の姿が、一葉の瞳にはどれだけ哀れに写ったのだろう…。



「ヒロも奏も、それに松も…俺が帰ってきたからあんな事になった。やっぱり、俺は安易に帰ってくるべきじゃなかった。俺が疫病神になって、皆に災いを齎すんだ…。」



感情を押し殺したガラス玉のような瞳には、懺悔と後悔の涙…あとは天から下される罰を受けたいと願うのみ。



「じゃあ、私はどうなるのよ…神君が帰ってこなかったら、私は堕ちていくだけだったよ。だから、そんな悲しい事を言うのは止めて。」



全身の力を、その潤んだ瞳に凝結させたような、一葉の強い眼差し…。



俺が人前で涙を見せるのは、真美が亡くなってから一度も無かった。



そうする事で真美の事を思い出さないようにし、周りの人間には偽りの強さを誇示した。



真美の部屋で一葉と話した時にも、自分の中で違和感を感じていた…隠す事無く、一葉の胸の中で泣ける自分…。



本当に必要だったのは、俺を求める一葉では無く、一葉を求める俺の姿…真美の面影を模した十字架で断罪を待つ事では無く、救いの道を指し示しような、一葉の包み込む光。



真美の気持ちもそこにある事を、俺はまだ気付いていなかった…。
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