WILD ONE ~キミに夢中~
古びた大きめな楕円形のちゃぶ台の上にはグラスに入った麦茶が並ぶ。

「あ、来たか。まぁ、座り。……今日来るなんてな。私、急いで老人会で佐藤さんに漬け物渡してすぐに帰って来たんだけんどよ」

「あ、ごめん」

素直に私が麦茶の前に座ると、右側にアッキーが陣取る。

そして事もあろうか、

ゴロン──

アッキーは寝転がるとテレビのリモコンをポチポチといじりだした。

なにコイツ。

まるで自分の家のように、私よりも居心地良さげに、

飼い慣らされた猫のように、床に転がるアッキー。

そして何も言わないトモ婆ちゃん。

2人のかもし出す空気が自然であればあるほど、自分がよそ者みたいで居心地が悪い。

落ち着かない気分で見渡した大きな畳の部屋には年期の入った家具が並び、民芸品までがなぜか食器と一緒に食器棚に並んでいる。

いつも不思議だと思ってた。

浦ヶ崎には不思議がたくさんある。

七不思議程度じゃ収まらない。

だけど何が不思議って?

ダントツ1位はぶっちぎりで急上昇したこのダークホースアッキーだ。




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