ＷＩＬＤ ＯＮＥ ～キミに夢中～

小さなため息をつく私にアッキーは無言で目玉焼きの乗ったお皿を指さす。

これはお前の分だと、そう言っているアッキーの指。

はぁぁぁ。

もうコイツはいないものだと思おう。

空気だ。ちょこっと赤い空気だ。

よしッ。

気を取り直すとアッキーの指をわざと無視して物音のする台所に向かって声をかけた。

「婆ちゃ～ん。おはよぉ」

「あ、おはようさん。タキも早く食べろよ～。遅刻すっぞ～」

トモ婆ちゃんが台所から顔だけを覗かせた。

どうやらその表情からもアッキーがここで朝ご飯を食べるのは普通である事が伺える。

ちゃぶ台に用意された朝ご飯とアッキー。

そして当たり前の『おはよう』。

なんだかこの自然な雰囲気がちょっとドラマみたいでこの風景に自分が似合わないんじゃないかとまた不安が嵩を増す。