WILD ONE ~キミに夢中~
ノックして職員室のドアに手をかける。

その瞬間、後ろから『江川、担任の村上だ。よろしく』、パコンと何かで頭を軽く叩かれた。

「あ……よろしくお願いします」

振り返って軽く下げた頭を持ち上げた瞬間、『げ!』と固まってしまう。

だってその容姿は完璧にヤバい。

……てか、ヤバいのは生徒だけじゃないじゃん!

いまどき真っ黒な髪でパンチパーマ。

ダボダボな白いジャージ、そして健康サンダル。

その上、薄い茶色のメガネを装着してらっしゃる。

どう見ても……。

教育者がその格好って……どうなの?

「センセーに向かって『げ!』じゃねぇんだよ。まったく。……いくぞぉ」

センセーはそう言うと出席簿を小脇に抱えるとがに股で歩き出す。

……生徒がカラフルならセンセーはモノクロ。

こうなってくると俄然カラフルのが可愛げがあるってもんだ。

『なにやってんだよ?早く来い』と振り向くヤクザ……じゃなくて村上センセー。

「は、はい……」

完全にチキンな私は急いで後を追った。
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