WILD ONE ~キミに夢中~
生徒から『ムーさん』と呼ばれる村上センセーに事務的に紹介されること10秒弱。

『空いている席に座っとけ』と私は2年6組に放たれた。

ぐるりと見渡すと窓際の後ろに2つ、その横に2つ、空席がある。

超ラッキー。

絶好の『窓際で後ろ』な席に得した気分だ。

けどやっぱここでも『真っ赤』と『男?』と『女?』と『マジ?』の洗礼をうける。

『マジだよ!』と言えたらどんなに気持ちいいだろう。

顔がひきつるし。

一歩進む度に視線が絡み付くし。

私は突き刺さるような視線をかいくぐり、やっと一番後ろの窓際の席に滑り込んだ。

はぁぁぁ。

疲れた。

本当に、本当に疲れた。

ふと見た窓の外は今日も真夏日。

田んぼに手拭いを首に巻いたリアルなカカシが立っている。

……ド田舎すぎ。

「今、いないの誰だ~?」

「高藤君と中山君です」

眠い……。

窓から吹き込む強めの風が気持ちよくて、朝から続いた緊張とパニックのお陰で、私が机に突っ伏すまでにそう長くはかからなかった。
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