俺と少女とくまと夏休み
『え…?』



振り返るのはちょっと怖かったけど、
その女の子の声があまりにも幼い気がしたから。

気になって振り返った。




「ねぇ、その袋の中って食べ物?」




路地裏で壁に背を預けていた女の子は
暗闇でも分かるほど、魅力的な笑顔をしていた。




『え?』



「それ。その中のものって食べ物かって聞いてるの」



『そう…だけど』



「ちょうだい」



『はい?』



「おなか空いて死にそうなの。だから」




ちょうだい?
彼女がそう呟いたときにはもう俺の手から
袋が消えていた。
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