くろねこ。
くろねこ。
はぁはぁはぁっ・・・
暗い道をひたすら走る。
鞄を胸元に抱きしめ、真っ直ぐ真っ直ぐに走る。
夜の歓楽街の裏道。
表の顔とはまったく違う、暗く、ジメジメとした空気。
空気を切るように真っ直ぐに走る。
「あっ!・・・」
割れたビール瓶を視界に捕らえた瞬間、右の肩に激痛が走った。
「あっ・・・くぅっ・・・。」
押えた手には薄暗い証明でも分かるほどに血がついていた。
良かった。足じゃなくて。
ショールを肩にかけなおし、しっかりと傷口を隠し、また走り出した。
もう少し・・・
もう少し・・・。
表通りに出た瞬間、一瞬その眩しすぎるネオンに目を眩ませた。
それほどまでの長い時間あの暗闇にいたのかと思うと、振り向いた路地がいっそう暗く感じた。
「あっ・・・。」
血・・・流しすぎた・・・。
フラフラと通りすがりの人にぶつかった。
『って!どこ見て歩いてんだよ!』
「あ・・・。たすけて・・・。」
あ~やばい。
目の前・・・まっ・・く・・・ら・・・・。