くろねこ。

ネコっ!!・・・・

呆然と立ちすくむネコがじっと見てしまっている自分に気が付き振り向いた。
温室に繋がる大きな窓から入る日差しでキラキラと輝く髪の毛、細いシルエットがなおさら細く見える。
少し距離のあるネコなのに耳が赤いのが分かる。

気付いたらネコの目の前に立って、小さな頭とつむじを見下ろしていた。

顔を上げたネコが真っ赤な顔で俺を見る。

「日和く・・ん・・・??」

すぐに顔を下に向けて立ちすくむネコ。
怒ってねえのに、怒られてる子供みてえ。

「お前・・・何してんだ、こんなとこで。」

なにしててここまで辿り着いた?
説明は終わったのかよ。

「・・・・。」

「おい。こっち見ろって。」

??なに無視してんだよ。って、こんな場面見たら当たり前か。

「・・・・。」

「おいっ!・・・っはぁ~。」

何も言わないネコに戸惑いながらも少しいらつく。
言いたい事があるならはっきり言えよ。

「おっ!・・・「ひ・日和くん!ふ・・・服・・・せめてズボンは・・・。」

「あ?」

小さくなっていくネコの声を聞き取るのに体を曲げてネコの顔に近付く。

「なんて言った?聞こえね。」

あ。
ネコの顔が真っ赤になった。

「・・・ふ・服着て!!」


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