ラストゲーム
「そういやさー、噂で聞いたんだけど、美佳のクラスに居る田中って子の家、毎日借金取りが押し掛けてるらしいよ？怖いねー。」




肩をすくめ小声になる翔子。




「あー私も聞いた。父親働いてなくて昼間からパチンコ店に入り浸ってるんだって。」




隣で優が相づちを打った。



昔から翔子は噂好きな所がある。




唯一、翔子に直して欲しい欠点だったが久々の仲間との会話に高揚していたため、私は話を合わせていた。



「えー、マジで？田中家って悲惨なんだねー。かわいそー。
そんな事聞くと、いつも笑顔の田中君の笑顔が切なく見えてくるよね。」




いつになく喋りすぎた私。



この会話をうちのクラスの田中雅樹ファンが聞いていた。




それが全ての始まりだった。




こんな些細な会話をきっかけに私はA組全体からはぶられる事になる。




これは後に知ったことだが、田中雅樹は爽やかな人当たりのいい少年ではなく、中学時代から自分の気に触ることをした奴を、取り巻きと供にはぶることで有名な裏の番長的存在だったらしい。
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