ラストゲーム
田中・・・。




奥歯を噛み締める。




今更感傷に浸ってもしょうがないが、悪夢は消えない。



始まりは、ATMごっこだった。




ATMごっこ。
それは単純なもので、要するに私の机の中、下駄箱、ロッカー、ありとあらゆる所に預金と称してゴミが投げ込まれたのだ。



そして引き出しと称して私の持ち物が無くなっていく。




私の名字が某銀行名と同じというだけで行なわれたこの遊びは、田中が飽きるまで続けられた。




今思い出してもくだらなさに拍車をかけた遊びだ。



しかしこの遊びは、単なる序章に過ぎなかった。



女子トイレで水浸しになっている惨めな自分。




机に書かれた「死ね」という文字。




何よりも仲間のいない孤独。




どんなに強い人間でも心が折れてしまいそうな環境に置かれていた。
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