Jam Diary ~3ヵ月で何度、トキめきますか?~
約1時間後。目の前の大きな鏡には、すっかりモテ髪に変身したあたしが映っていた。
個性的すぎず、でも地味じゃないヘアスタイルは、まさに恋愛仕様。
「いかがですか、お客様?」
営業口調にしては得意げな声で、タケルがたずねてくる。
「……かっ、完璧!」
「やろ?」
「さすがタケル!」
「やろ?」
「タケル天才!タケル最高!あたしカワイイ!」
「……やろ?」
関西人のくせに最後の言葉にツッコまなかったのは、一応あたしがお客様だからっぽい。
とにかく、こんな腕のいい美容師が友達で、あたしって幸せ者だと思う。
「ありがとーっ、タケル!」
鏡の中じゃなく直接目を合わせ、にぱっと笑うと、
「こんどはフラれんなよ」
と例の笑みが返ってきた。