Jam Diary ~3ヵ月で何度、トキめきますか?~


しだいに漂い始める香ばしい香り。

おいしいコーヒーが出来上がるまでの待ち時間が幸せだって、あの人も言ってたっけ。


……今、こうして思い返せば

笑っちゃうくらい反則だらけの人だった。


あの優しすぎる笑顔も。

私と共通点が多すぎるとこも。

添い寝して抱きしめてくれた腕も。


どれもこれも反則で、だから私はあんなに好きになっちゃったんだ。



ふっとコーヒーメーカーのランプが消えた。

おいしそうな茶褐色に満たされたカップに、手を伸ばす。


そのとき。


カチャ、と入り口の方から音が聞こえた。


「あ、すみません。今日はもう閉店――」


言いかけて、言葉を飲む私。



……ああ、また。

反則だ。


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