韓国人店長と私~強がった恋の小さな結末~
一瞬の出会いはすっかり無くしていた自信を取り戻させてくれた。
大丈夫。
まだ私はちゃんと一人の女だって、アキちゃんが教えてくれた。
彼ほどの人に誘ってもらえるうちはまだ大丈夫だから。
久しぶりに少し笑うと、誰かに見られないように手を開く。
手の中からは細かくちぎった紙くずが、パラパラと舞い、
静かにゴミ箱へと消えていった。
後にも先にもきっと最後であろう、誰もがカッコいいと振り返るような人との恋。
いや、恋にもならなかった……小さな思い出。
パンパンと残った紙を払うように手をはたくと店の入り口へ戻る。
「いらっしゃいませ!」
忙しくなってきた店内に吹っ切れたように明るい、私の威勢のいい声が響き渡った。
【完】