真冬の恋人
「おはよう、真帆子」
そして朝になると、やはり男は家の前で待ち構えている。
家族に不審がられないうちに、なんとかしてほしい。
「一晩中、そこでずっと待ってるの?」
「うん」
「ご飯は?」
「食べない」
「……」
私は学校の指定カバンの中から、家にあった菓子パンを取り出した。
私のために買ってあったであろうメロンパンを、少し後悔しながら渡す。
「?」
男は不思議そうな顔をして、メロンパンをまじまじと見つめた。
「あげる」
男は嬉しそうに笑って、メロンパンの入った袋に手を伸ばした。
「ありがとう」
にっこりと微笑んだ彼を見て、
なぜだかとても、懐かしい気分になった。