真冬の恋人
闇夜に映える銀色の髪。
真っ黒な瞳には、私の姿がくっきりと映っていた。
見覚えの無い顔に、私の頭は混乱する。
「……ふ、不審者ですか?け、警察呼びますよ」
「ぼくのこと、覚えてない?」
悲しそうに眉を下げた男は、いくら見ても私の知らない人だった。
「……わかりません」
どこかで会ったことがあるのだろうか。
「……そっか。
ぼくは君に何かお礼がしたいんだ」
「お礼?」
私は苦笑いで首を傾げながら、心の中は恐怖心でいっぱいだった。
人通りの少ないこの道。
助けを呼ぼうにも、呼べないのだ。
「何か欲しいものとか、やってほしいこととか、無い?」
なおも男は私に話し掛けてくる。