真冬の恋人
じゃあ私の前から消え去ってください、
などとは口が裂けても言えなかった。
もしそんなことを言って怒らせてしまったら最後。
私は命を落としかねない。
「な、無いです」
私は男を怒らせないように、無難に答えた。
「無いなんてことはないでしょ」
そんなことを言われても、怖くて怖くて、考えられないのだ。
「じゃあ、こういうのはどう?」
男は私に向かってにっこりと微笑んだ。
高い鼻、大きな黒い瞳。
微笑んだその表情は、私の頭に深く焼き付いた。
「冬の間だけ、一緒に過ごそう」
「……え?」
「ただし、冬の間だけ。その間、ぼくは君になんでもしてあげる」