真冬の恋人
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私の教室は一階にあり、
私の席は窓側の一番後ろである。
小テストがある日は、必ず男が解答を持ってやってくる。
誰にも気付かれないようにコツンと窓を叩き、
にこりと微笑む彼。
毎回どうやって入手しているのかわからない、正しい答えの紙。
いけないとはわかっていても、その答えに頼ってしまう。
「何かしてほしい事、無い?」
「……特に無い」
帰り道、そう何度も尋ねる彼。
してほしい事なんて、なかなか思いつかない。
「あっ。はい、これ」
そう言って男の手から渡されたのは、
冷たい缶のココアだった。
冷えきった手に、キンと冷たい。
「なんでホットじゃないの?」
「あー……売り切れてた」
この男、気が利くのか利かないのか、よくわからない。