秘密にし・て・ね(後編)
そう思うといてもたってもいられなくなり、図々しいと思ったけど人を掻き分けて何とか最前列まで来てしまった。
仕事をしている夏樹は初めてみた。
いつも家で見ている夏樹は私に優しい微笑みで包むような表情をしているのに、今目の前の夏樹は監督さんらしき人に演技指導されているのか真剣な面持ちで普段の夏樹とは180℃雰囲気が違っていた。
夏樹が動けば周りから奇声が上がる。ここに居る全ての人が夏樹を見ていた。
不意に夏樹がこちらをチラッと見た。
ドキッ 佳奈と一瞬目が合った・・・・・・気がした。
でも夏樹は何事も無かったかのようにすぐに目を逸らし見えないところまで行ってしまった。
それからは、またこっちを見てくれないかなと切望したがこちらには目もくれない様子で淡々と仕事をしている様子だったので諦めてその場から離れて駅に向かった。