ブラッティ・エンジェル
「だって、なにかなぁ?」
「ごめん!なんか奢るから」
「もう。いいよ。そんなことしなくて」
イタズラをした子供を許す母親のように、軽く息を吐いたサヨ。
 ホッとしたように、胸をなで下ろす望。
 掴んでいた腕を放し、サヨは手を差しのべる。
「さぁ。そのモールに行こ」
「うん」
ギュッと掴んだ手が、温かかった。
 自分は、幸せ者なんだと改めて実感した。
「ねぇ、サヨ」
「ん?」
好きだよ。
 そう言おうとした口を、グッと結んだ。
 大事なことは、簡単に口にしてはいけないと思った。
 それに、ギュッと握った手から、サヨの笑顔から、その存在から、伝わるから。
 と、望は少し微笑んだ。
「なんでもない」

  
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