ブラッティ・エンジェル
「今日は一段と機嫌が悪いようだネ」
「あ゛?」
ぎらっと睨んだ先には、飄々と笑っているセイメイがいた。
 ギクッと、思わず身構えた。
 セイメイがいるということは、ウスイがいるということだ。
 ユキゲは、思わず後ずさりした。
「ああ。ウスイはいないヨ」
「そう、なのか?」
「ボクがウソつけるとでも言うのかい?」
「そこまで言ってねぇよ」
さっきまでの考え事で疲れているというのに、更に疲れそうなそうな相手に会ったことに、少し溜息をついた。
 コイツはいつもニコニコ、ニコニコ。悩みないんじゃないかって思う。
「君、1人なのかい?」
「どう見ても、そうだろう。サヨなら、デート中だぜ」
「そう。幸せそうだネ」
ふっと、細い目から漆黒の目が覗く。これが、憂いの表情と言うのか?
 オレの周りの奴らは人間くさい奴らばっかだ。
 と、ユキゲはイラッとした。
 そして、オレもそうなのかと疑問に思った。
 いつだったか、サヨに心があるんじゃないかと言ったことがある。
 でも、言った自分自身がそれを信じていない。
 矛盾している。
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