ブラッティ・エンジェル
 サヨは時間を確認するために、腕時計を見る。まだ昼には時間がある。
「なぁサヨ。」
「ん?」
サヨはキョロキョロと、辺りを見渡しながら応える。
 まだ時間ではないが、望をさがしている。
「オレらにも、心ってあるんじゃねぇ?」
「え?」
思いかけない言葉に、サヨはユキゲを見つめてしまう。
 ユキゲは、ふざけていない。いつも以上に、真剣だ。
「なに言って」
「だってさ、オレらが持ってるこの感情って、心って言うんじゃねぇの?」
「・・・」
サヨは黙ってしまう。
 考えたことが、なかった。そんなこと。そもそも、心ってなに?
 しばらく、二人の間に思い沈黙が流れた。
 しかしそんな沈黙も、すぐ破れた。
 ぐぅ〜。
「お腹、すいた〜。」
サヨはなったお腹を押さえながら、呟く。
 天使は、ほとんど人間と同じで、お腹もすくし、喉も渇く。眠たくなるし、酔っぱらったりもする。ただ、病気はしない。
「サヨは、ほんっとに食いしん坊だな。そのうち、太るぞ。」
「余計なお世話よ!」
サヨはそう言って、ユキゲを肩から埃をはらうようにはらい、ズカズカと大股で歩き出した。はらわれたユキゲは、空中で体勢を整えてサヨを追いかける。
「どこ行くんだよ。ノゾムを待ってんじゃねぇの?」
「まだ時間じゃないよ。お腹空いたし、ご飯食べるの。」
サヨは、拗ねたようだ。顔はぶすっとしているし、声には棘がある。
 ユキゲは、困ったような笑顔で隣を飛ぶ。けして、悪気があったわけではない、いつもの冗談で、こんなに怒るとは、思っていなかった。
 早く来てくれ〜、ノゾム。
 ユキゲは、心の中で祈りを捧げていた。
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