ブラッティ・エンジェル
 街は、楽しそうなクリスマスソングであふれかえり、星のような綺麗なイルミネーションで飾られていた。
 街を歩く人の顔を一段と輝いて見えるのは、クリスマスのせいだろうか。
 そう、今日はクリスマス。世界中が幸せに包まれる日。なんて、誰かが言っていたけど、本当なのだろうか?
 少なくとも、サヨは幸せだった。
 今日は、望とクリスマスデートだった。
 デートは何回もしてきたけれど、今日はクリスマス。特別だ。
 だから、今日はうんとおめかしをしてきた。
 黒をメインにしたいつもの服とは正反対の、それでもサヨらしさのあるクリスマスしようの服。
 髪型だって、1つ2つアレンジした。
 手には望へのクリスマスプレゼント。何日も何日も悩んで悩んで、やっと昨日買ったもの。
 今までのクリスマスまでの期間、ワクワクしてキラキラしていた。
 冬の寒さなんて、吹き飛んだって言いたいけど、やっぱり寒くて寒くて手のひらに息を吹きかけては、こすり合わせる。
 サヨは一人で待ち合わせ場所にいた。ユキゲはサヨが言う前から、ついて行かないと言った。
 最近のユキゲは、どこかおかしい。
 具体的にこれとは言えないんだけど、なんかおかしい。
 おかしいと言えば、最近サヨはセイメイを見かけないでいた。
 いくらあのセイメイでも、失恋のショックはきつかったのだろうか?
「サヨ!」
ふと、空から白い結晶が舞い降りてきた。
 雪。頬に落ちたそれは、すぐに溶けて消えてしまった。
 その中に見える望。
 いつものような子供っぽい笑顔で、大きくサヨに手を振っている。
 サヨも、手を振り彼の元へ歩いていく。
 あぁ、こんなにも簡単に彼に歩み寄れるなんて、昔の自分は思っていなかった。
 クリスマスのせいか、サヨはそんなことを考えていた。

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