ブラッティ・エンジェル
 映画館から出てきた瞬間、異様に空が眩しく思えた。暗闇にいすぎたせいだね。
「いや~、なかなか面白かったね」
「そうか?定番って感じしたけど」
頭を傾けている望は、さりげなくポケットに手を突っ込んだ。
 その隣では、望の言葉をうけて考えだしたサヨがいた。
 その胸元には、鈍く光る希がいた。
 なぜか、複雑な気持ちになった。サヨには偉そうなことを言ったけど、なんか変な感じだ。
「そんなこと無いよ。ほら、あの雪のシーンとか、ここんとこがなんていうの?ほんわりした」
自分の胸に手を当てて力説してくる。
 望はそこが定番だってなんて思いながら、ポケットから小さい袋を取り出した。チェックで可愛らしいリボンがついている、クリスマスっぽい袋。
 それを望は力説して、身を乗り出しているサヨの顔の前に差し出した。
「へ?」
思わず手に取ってみたサヨは、目を丸くしてそれを眺めた。
 軽くて、そんなに大きくない。と言うか、小さい。
「クリスマスプレゼント」
いっつも明るくて元気で、子供っぽい彼が恥ずかしそうな照れているような顔をして、頬を掻いていた。
 そんな彼がとても可愛いと思いながら、あれ?と首を傾げた。
「クリスマスプレゼントって、女の子が男の子にあげるものじゃないの?」
「はい?」
緊張していた望は、サヨの意味不明な発言に一気に脱力した。
 いったいコイツは、クリスマスを何と勘違いしてるんだ?
 こうゆう風に付き合ってみると、サヨはあまり人間の生活を知らないと言うことがわかってきた。
 サヨはしっかりしていて、大人のイメージがあったんだけど…。
「それは、二月十四日のバレンタインだよ」
「バレンタイン?なにそれ?」
「女の子が好きな男の子にチョコをあげる日だよ。セイント・バレンタインデー」
「マジで!?知らなかった!準備しないと」
「いや、それより…」
なんだ、チョー可愛いんですけど。
 あたふたしているサヨを見て、望は胸がきゅーっとなった。
「開けていい?」
「うん」
なんか、急に照れくさくなって望は自分の靴先を見つめた。
 かさこそと袋を開ける音。
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