ブラッティ・エンジェル
 ちょっと気まずいムードだと思っているのは望だけなのが、隣を歩いているサヨは繋がっている手をブラブラと大きく揺らしている。
 もう、夜が更けている。そこら辺の高校生が出歩いてはいけない時間。いったい、何にそんなに時間を使ったのだろうと、望は首を傾げた。
 さすがに警察にお世話になりたくないので、望は家路についていた。
 サヨはそれの付き添い。なんか、逆なような…。
 もうすっかり、雪は止んでいた。道ばたに積もった雪は、ほとんど溶けて水と交じっていた。
 滑るんじゃなくて、足を取られて転びそうだった。
 しかも、この道は少しきつい坂道。
「サヨ、転ばないようにね」
「大丈夫だよ、転ぶわけ…!」
突然視界からサヨの姿が消え、体がサヨのいた方に傾いた。こっちまで、転ぶところした。言うなら、道連れ。
 地面に腰を抜かしたように転んでいるサヨは、泣きそうな顔をしていた。
 相当痛かったのだろう。それに、雪を被って寒そうだった。
「ほら、すぐ家だから。着いたらシャワー浴びなよ」
望は自分の背をサヨに向け、乗るように指示した。
 びしょ濡れのサヨは一瞬ためらったが、今日見た映画のワンシーンを思い出し彼の背に体を預けた。
 映画の彼女も、こんなに幸せな気持ちだったのかな。

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