ブラッティ・エンジェル
「サヨ~、帰って来たぞ~」
無造作に靴を脱ぐと、一目散にリビングに向かった。
「お~い、パーティはじめるぞ。…て、あれ?」
しかし、そこはもぬけの殻だった。ただテレビの音が流れるだけの無人の空間だった。
「服でも乾かしに行ったのか?それとも、便所?」
テーブルに買ってきたものを置いて、テレビを消して、リビングを出た。
 脱衣所に行ってみたけど、乾燥機が静かな音をたててまわっているだけだった。トイレも電気がついていなかった。
「俺がいない数分の間に何があったんだ?」
なぜか、焦ってきた望はとりあえず人が入れそうなところの戸を開けまわった。
 一階の何所にも、サヨはいなかった。じゃぁ、二階?
 望はとりあえず、自室の扉を開けた。電気はついていなかった。しかし、暗闇の中何かが動くのが見えた。
 望のベッドのあるあたりだ。
 望はあえて電気をつけないまま、それに近づいていった。
「こんなとこで、なにしてるの?」
なにやらこそこそしていたサヨが、肩をふるわせた。
 驚いたように息をのんだ音が聞こえた。
「望。おかえり。いつ帰って来たの?」
さっとサヨが何かを隠したのが見えた。
 怪しい。
「さっきだよ。…今何隠した?」
「なにも!なにも持ってないよ」
慌てたような声。
 怪しい。
「白状しろ!」
「ダメ~」
サヨの隠したであろうものを取るために望は身を乗り出した。サヨも取られまいと、ベッドの上で転げ回った。
 それがしばらく続く。
 望も諦めなければ、サヨも白状しようとしない。

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