ブラッティ・エンジェル
 くぅぅぅぅ
 サヨのお腹が、また鳴る。お腹お押さえながら、サヨはため息をつく。
「怒る元気が出ない・・・。」
サヨはうなだれる。それを見たユキゲは、内心ほっとして、小さくガッツポーズをした。
「昼だし。食べに行こうか。」
望は、陽気のサヨの手を取って歩き出した。
 サヨは転びそうな足取りで、望に引かれて歩く。ユキゲは、面白そうに笑いながら、後をついていく。
「え、ちょっと。」
サヨは繋いだ手まで、熱くなる。鼓動が早くなり、大きくて周りの音をかき消す。
「ん〜?」
望はずんずん歩いていく。手を繋いでいることを、気にしていないみたいだ。
「手、放して。カップルに思われるよ。」
サヨは恥ずかしそうに、うまく動かない唇から言葉を発する。
 望は、アハハと楽しそうに笑う。少しも、恥ずかしいと思っていない。おまけに、こんなことを言う。
「いいんじゃない?オレとサヨの、初デート。」
望は、悪びれた風も恥ずかしさも、これっぽっちも感じ取れない。逆に、喜んでいるというか、楽しんでいる。言葉の最後に、ハートマークがつきそうなくらいだった。
 サヨの顔は、みるみる赤くなっていく。
「よくな〜い!」
今日もまた、昼の東京にサヨの叫びが響き渡った。
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