ブラッティ・エンジェル
「サヨ。俺…」
散歩してくると言いかけたマスターは、目を丸くしサヨの後ろで静止していた。
やぁ。と、セイメイがそれに手を振る。
わけのわからないサヨは、二人の顔を見合わせることしか出来なかった。
「返事がもらえるかなっと思ってネ」
「…」
あの陽気なマスターが、下唇を噛み苦しそうにうつむいていた。拳は強く強く握られていて、小刻みに震えていた。
うっすらと、セイメイの瞳が現れる。ゾッとさせる色の瞳。
「その様子じゃ、返事はまだなんだネ。残念だヨ。チャンスは今しかないのに」
「俺は…」
「あの人が聞きたいのは、アンタの気持ちだよ。本当のネ」
「ちょっと!待ってよ」
ただならぬ雰囲気と、わけのわからない会話にサヨはパニックを起こしていた。
「いったい、なにが起こってるの?セイメイとマスターが、知り合い?あの人って?」
「サヨチャン。キミが知らなくてもいいことが世の中には、たくさんあるんだヨ」
「これがそうだって言いたいの?でも…」
チラリと、マスターを見る。
どこか昔のサヨに似ていた。
どうすればいいのかわからなかった時の。道に迷って、なにもわからなくなった時の。自分の気持ちを包み隠した時。愛するものを一番思ってた時。そして、失った時。
「知る権利は無いかも知れないけど、マスターをこのままには出来ないよ」
スッと、少し細めたセイメイの冷たい瞳がサヨを射貫く。
負けじとサヨも決意にこもった目で返す。
さすがのセイメイも心が揺れる。
「ボクが話すわけには行かないんだヨ。ボクは傍観者にすぎないからネ」
さすがに負けたセイメイは目をそらし、申し訳なさそうに言った。
飲みかけのコーヒーを置いて、セイメイは出入り口へと歩いていった。
からん、からんと、不規則なメロディー。
「また来るヨ。返事、早めにしな」
店を出て行った途端、セイメイの姿は消えてしまった。
後味の悪い、別れ方だった。
散歩してくると言いかけたマスターは、目を丸くしサヨの後ろで静止していた。
やぁ。と、セイメイがそれに手を振る。
わけのわからないサヨは、二人の顔を見合わせることしか出来なかった。
「返事がもらえるかなっと思ってネ」
「…」
あの陽気なマスターが、下唇を噛み苦しそうにうつむいていた。拳は強く強く握られていて、小刻みに震えていた。
うっすらと、セイメイの瞳が現れる。ゾッとさせる色の瞳。
「その様子じゃ、返事はまだなんだネ。残念だヨ。チャンスは今しかないのに」
「俺は…」
「あの人が聞きたいのは、アンタの気持ちだよ。本当のネ」
「ちょっと!待ってよ」
ただならぬ雰囲気と、わけのわからない会話にサヨはパニックを起こしていた。
「いったい、なにが起こってるの?セイメイとマスターが、知り合い?あの人って?」
「サヨチャン。キミが知らなくてもいいことが世の中には、たくさんあるんだヨ」
「これがそうだって言いたいの?でも…」
チラリと、マスターを見る。
どこか昔のサヨに似ていた。
どうすればいいのかわからなかった時の。道に迷って、なにもわからなくなった時の。自分の気持ちを包み隠した時。愛するものを一番思ってた時。そして、失った時。
「知る権利は無いかも知れないけど、マスターをこのままには出来ないよ」
スッと、少し細めたセイメイの冷たい瞳がサヨを射貫く。
負けじとサヨも決意にこもった目で返す。
さすがのセイメイも心が揺れる。
「ボクが話すわけには行かないんだヨ。ボクは傍観者にすぎないからネ」
さすがに負けたセイメイは目をそらし、申し訳なさそうに言った。
飲みかけのコーヒーを置いて、セイメイは出入り口へと歩いていった。
からん、からんと、不規則なメロディー。
「また来るヨ。返事、早めにしな」
店を出て行った途端、セイメイの姿は消えてしまった。
後味の悪い、別れ方だった。